2026年2月28日、アメリカとイスラエルがイランを攻撃した。昨年6月のように核施設に限定した攻撃ではない。政治と軍事の中枢を狙った攻撃で、イランの最高指導者ハメネイを殺害した。この問題をめぐって、ネット上に登場した日本の主要新聞の「社説」「主張」を比較点検してみた。比較したのは、読売新聞(読売と略 以下同様)、朝日新聞(朝日)、毎日新聞(毎日)、日本経済新聞(日経)、産経新聞(産経)、東京新聞(東京)、北海道新聞(北海道)、信濃毎日新聞(信毎)、沖縄タイムズ(タイムズ)、琉球新報(新報)、京都新聞(京都)、神戸新聞(神戸)、西日本新聞(西日本)、上毛新聞(上毛)、神奈川新聞(神奈川)の計15社、各2月28日―3月3日の社説・主張である。このうち、読売新、毎、日経、北海道は二度にわたって社説でこの問題を論じていた。私は、昨年6月のイスラエルとアメリカのイラン攻撃についての各紙の社説などを比較して検討してみたが(本欄にもけ掲載)、それを受け継いだ形で、今回もイラン攻撃についての社説などを検討してみたい。論点は多岐にわたるが、以下では主な論点についてのみ、検討の対象とする。
はじめに、読売を含め、ほとんどの新聞の社説は、この軍事攻撃を「暴挙」「蛮行」「無法」などと批判している。朝日と西日本は、「大国の横暴」だと批判し、北海道は、「史上まれにみる悪逆」と批判していた。昨年と違って、批判的な姿勢を見せていないのは産経のみであった。
1.国連憲章との関係について
(1)アメリカのイラン攻撃が国連憲章と国際法への明白な「違反」であると厳しく批判しているのは、読売、経済、毎日、東京、北海道、神戸、タイムズ、新報、京都、神戸、西日本、上毛、神奈川である。読売は、「またも国際法無視か」と厳しく批判する。京都は、先制攻撃に「道理がないのは明らかである」と言う。朝日は「違反」という言葉は使っていないが、国連憲章に反するとしており、信毎は、国際法を「無視」していると批判した。例えば、読売は、「国際法に違反する可能性がある攻撃を支持することはできない」と批判していた。とくに神奈川は「「私に国際法は必要ない」と公言してはばからないトランプ氏の行為は目に余る」と厳しい。北海道も同じである。これに対し、産経は、アメリカの攻撃は国連憲章や国際法への違反だという批判はしていない。その主張には、国連憲章や国際法はまったく問題にされていないのである。
(2)この問題は「自衛権」の有無に関係している。昨年6月のイラク攻撃の際に毎日が言っていたように、「国際法上、他国への武力行使が認められるのは、自衛権の行使か国連安全保障理事会の決議がある場合に限定されている。自衛権の行使は、攻撃を受けた後に反撃する場合や、差し迫った脅威があることが前提となるが、いずれにも当たらない。」昨年6月の攻撃の時、トランプ政権は決議どころか、軍事介入につき国連安全保障理事会に報告さえしようとしなかった。前回と同様今回も、安保理の決議などないわけであるから、アメリカに「差し迫った脅威」があったか否かが問題になる。これに関しては、読売、朝日、日経、信毎、北海道、タイムズ、京都、上毛が、イランからのミサイル攻撃は米軍関係者自身が可能性を否定していて、そういう脅威はなかったと論じた。北海道は、「米国に到達可能なミサイル開発」について米国防情報局は実用可能な開発は2035年までかかると評価している」と指摘する。読売は、トランプ政権は昨年6月のイラン空爆で、「核施設は完全に壊滅された」と作戦の成功を誇示していたはずだ。わずか8か月で脅威が復活したとすれば、当時の説明と矛盾する」と厳しく批判する。一方、産経は、当然のことながら、この点を問題にしなかった。
2.アメリカ議会の承認について
アメリカの攻撃が米議会の承認を得ていない点からも不法な攻撃だとするのは、読売、東京、信毎である。中でも、信毎は、「攻撃は国連安全保障理事会の決議もなく、米国で宣戦布告の権限を有する議会にもはかっていない。攻撃に法的根拠はない。」と批判し、北海道は、「攻撃が米議会の承認を得ていなければ、法治国家としてもゆゆしき事態だ。」と警告している。
3.ハメネイ師殺害と体制転換について
(1)イランの最高指導者ハメネイ師の殺害について、朝日と北海道はこれを「主権の侵害」だと批判し、毎日は「不法な蛮行」と批判し、日経は「常軌を逸している」と批判し、神戸は「法の支配を無視」するものだと批判している。とくに読売は、ベネズエラの時のように、「意に沿わない国家指導者を軍事行動で排除する斬首作戦」をイランでも決行したことに、「驚きと憂慮」を禁じ得ないと批判した。
(2)アメリカとイスラエルが、イランの体制転換を扇動していることについては、読売は「主権の侵害」、北海道、新報は「内政干渉」、信毎、タイムズは「国際法違反」、京都は「主権と自決権を侵害するもの」として、厳しく批判している。やや変わった批判は、東京が体制転換は「難しい」とし、京都が「無責任」だとしている例である。いずれもイラン国内には現体制を批判する動きがあることは認めつつ、体制を決めるのは自国民だという立場から批判しているのである。例えば、読売は、「どの体制を選ぶかは、当事国の主権の問題である。軍事行動で体制転換を図るのは主権侵害にほかならない」と厳しく批判する。一方、産経は「今回の米軍などの攻撃は体制転換の狙いもあろう」と是認しているのが、例外的である。
(3)イランの国内体制について、信毎、京都、新報、上毛を除いて多くの社説が言及し、その脆弱さと経済危機に付け込んでアメリカなどが攻撃を開始し、体制転換を呼び掛けているとみている。読売は、「物価高などへの不満からハメネイ師退陣などを求めるデモが全国に広がっていた」、「イスラムを当地の基本とする体制は、存亡の瀬戸際に追い込まれた」と見ていた。日経は、「米国の制裁でイラン経済は疲弊し、昨年末から経済難に抗議するデモが起き全国的な反政府運動に至った」と、アメリカの制裁の影響を指摘する。また、イスラエルの攻撃の影響も指摘する。「一昨年来のイスラエルとの交戦もあり、イランは弱体化している」と。だから、イスラエルは今を「痛撃の好機」と見、「米国も1979年の在イラン米大使館人質事件以来イランと対立している」ので、イスラエルに同調したという。しかし、イランの国内体制を深堀したような議論はなかった。
3.核協議について
(1)イランとアメリカがイランの核開発について協議をしている時に、しかも次の会議が予定されている時に、アメリカが軍事攻撃に出たことについては、読売、朝日、毎日、日経、信毎、北海道、タイムズ、京都、神戸、西日本、上毛、神奈川は、いずれ厳しく批判をしている。その中でも、読売、朝日、信毎、西日本は、協議はしょせんアメリカなどの「時間稼ぎ」だったのだと非難している。外交を無視して軍事量に頼ったということである。
(2)イランとアメリカの核協議が一定の進展を見せていたにも関わらず、アメリカは協議を捨てて、軍事攻撃をしたとするのが、日経、毎日、東京、信毎、京都である。例えば、信毎は「仲介したオマーンは27日、イランが核兵器製造につながる高濃縮ウランを放棄する意向を示していると語っていた」という。京都も、「イランは核兵器製造放棄の意向で、仲介国オマーンも進展と評価していた」という。東京は、「イランは核交渉で譲歩する姿勢も示していたが、米軍の攻撃で決裂は必至。そればかりかイラン以外の非核保有国が、自衛名目に核開発を加速する懸念は高まる」とユニークな批判をしていた。北海道は、トランプはイランが協議を拒否したというようなことを言うが、「交渉の進展を望まないイスラエルの要求に同調するかのような米国の態度」は理解に苦しむと批判した。これに対し、産経はこの協議の進展を認めず、「イランに核兵器開発の意思があったのは明らかだ」と断じていた。
(3)アメリカはイランが核開発をするのはけしからんとしてイランに攻撃をしたが、これはイスラエルの核兵器保有を認めることと矛盾するとして、核の二重基準を指摘する新聞もあった。北海道は、「イランの核開発を認めない一方でイスラエルの核保有を黙認する態度は身勝手が過ぎるというほかない」と批判し、「親イスラエルの米国の二重基準」だと主張した。一方、読売は、北朝鮮を問題にして、トランプは、「北朝鮮の核開発には目を瞑って「核保有国」と呼び、現状を容認するかのような発言をするなど、二重基準が目に余る」と厳しい批判をしていた。
(4)イランの核開発については、産経がその「放棄」を求め、読売がその「停止」を求めていた。読売は、イランが「長年、透明性を欠く形で核開発を続けてきた責任」を問い、「核武装の意図を否定しながら、核兵器の材料に転用できる高濃縮ウランの製造を続け、自ら危機を高めてきた」と指摘する。日経は、イランが「不透明な核開発への疑念を晴らせずにいる」ことを指摘している。毎日は 「核兵器開発を疑われる高濃度のウラン濃縮活動を停止」せよと言う。一方、北海道は、「そもそもイランの核開発を制限する核合意の枠組みから一方的に離脱し、イランのウラン濃縮再開を招いたのは第1次トランプ政権だ」とアメリカの矛盾を指摘する。日経も「米欧など6カ国とイランは2015年にイランのウラン濃縮活動を制限する核合意を結んだ。この合意から18年に一方的に離脱したのが1期目のトランプ政権だ。・・・今に至る危機の素地をつくった責任の一端は、トランプ氏にある」とトランプの責任を問う。
4.武力攻撃について
(1)なぜいま攻撃かと問いつつ、読売、日経、西日本は、中間選挙に向けてアメリカのトランプ大統領の支持率が低下傾向にある中、戦争の成果によって支持率を回復させようとしたのだと見ている。また、北海道は、「大統領の支持率が低迷する米国と首相が汚職疑惑を抱えるイスラエルに、関心をそらす狙い」があるのではないかと指摘している。
(2)イランへの攻撃はイランの軍事施設などと政府軍事関係者を狙ったという点ではすべての社説は一致しているが、攻撃が住民をも対象としたことには、すべての社説が一致しているわけではない。西日本、北海道、毎日、京都、信毎、神戸が住民への攻撃を取り上げている。とくに、北海道は、「小学校が標的となり多くの子供の命が奪われた」とし、毎日は、「今回の軍事作戦で約20都市が攻撃され、・・・民間人にも数百人の死傷者が出ており、南部の女子学校では100人以上が犠牲になったとされる」と批判している。
(3)イランは報復として、イスラエルへの攻撃のほか、近隣諸国にある米軍関係の施設などを狙った攻撃を行ったが、これについては、朝日、毎日、日経が、懸念を表明している。朝日は、「地域全体を巻き込む戦争に拡大させ」ないようにすべきだとし、毎日も「イランの混乱が周辺国に拡大すれば状況はさらに制御不能になる」。「すぐにやめるべきだ」と強く主張する。日経は、「報復の応酬」をくい止めねばならないという。アメリカの攻撃を受けたイランの自制を求めるのがほとんどである。
5.原油とホルムズ海峡について
戦争がホルムズ海峡封鎖の可能性と世界の原油供給に及ぼす影響については、ほぼすべての社説がこれを懸念している。
その中で、最もしっかりとした議論をしているのは、新報である。「イラン攻撃は世界と日本の経済にも大きな影響を与える。世界の石油消費量の2割、日本への原油の9割が通過するホルムズ海峡が事実上閉鎖された。日本国内の石油備蓄は254日分ある。ただちに不足しないとはいえ、価格の値上がりは避けられない。あらゆる産業に影響が出て、物価を押し上げる。」と問題を指摘している。同じように毎日も「ペルシャ湾・ホルムズ海峡は原油輸送の要衝だ。エネルギー供給を中東に依存する日本への影響も大きい。」「革命防衛隊がホルムズ海峡での船舶の航行を禁じたことで、原油や天然ガスの輸送ルートが事実上封鎖されたとの報道もある。」日経は、「衝突がペルシャ湾の航行や石油施設に影響する恐れから、原油価格には上昇圧力がかかる。世界経済の重荷になりかねない。」「エネルギー供給の停滞が深刻に危惧される。海運大手がエネルギー輸送の要衝であるホルムズ海峡の航行停止を決めた。原油や天然ガスの価格に上昇圧力がかかるなど市場が動揺し、世界経済の重荷となるリスクがある。」朝日は、「ペルシャ湾の出入り口ホルムズ海峡は、世界の海上石油輸送の約4分の1を支える要所だ。攻撃の欧州により、船舶の航行は事実上止まっている。この状態が長引けば、原油価格の高騰など世界経済に大きな打撃となろう。中東に原油の9割以上を依存する日本は、影響を免れない。約240日分の石油備蓄があるが、ガソリン価格の上昇も心配される。先を見通した冷静な対策が求められる。」
これ以外の読売、産経、東京、北海道、タイムズ、神戸、京都、信毎は、比較的簡単に、ホルムズ海峡が封鎖されれば、原油価格が上昇し、世界経済に大きな影響を及ぼすだろうと警告している。
6.歴史の教訓
アメリカなどがイラクやリビアなどを武力攻撃しても、その後には混乱を招いただけであり、そうした歴史を教訓として学ぶべきであるという主張は、多くの社説が述べている。これは昨年6月の攻撃に際しても問われていた問題である。
朝日は、米英などがフセイン体制を倒した後のイラクは泥沼化し、北大西洋条約機構(NATO)軍が空爆し、カダフィ政権が崩壊したリビアはいまも内戦が続いているとし、「歴史の教訓に学ぶべきだ」という。毎日は、イラクでは2003年、米軍の侵攻でフセイン政権が崩壊した後、国内が大混乱し、アフガニスタンでも01年に米軍の攻撃で社会が混乱した。米国にとっては苦い教訓だったはずだという。日経は、「米国はイラクやアフガニスタンに軍事介入し後始末に苦しんだはずではないか。」という。新報は、「米国はかつてアフガニスタン、イラクで体制転換を目指し失敗した」と指摘。神戸は、「米国は2003年、大量の破壊兵器を隠し持っているとしてイラクのフセイン政権を打倒した」と批判、西日本は「米国は2000年代にイラクやアフガニスタンなどで起こした戦争を泥沼化させ、自国も痛手を被った苦い経験がある。トランプ政権は同じ過ちを繰り返すのか」と厳しい。
7.世界の反応
(1)「国際社会」(筆者はこの言葉は嫌いだが)の動きに注目しているのが、北海道、朝日、新報、上毛、西日本である。このうち西日本は「結束」して、アメリカ・イスラエルに「最大限の自制」を求めるべきだとし、北海道は両国の「暴挙を容認してはならない」としているが、朝日、新報、上毛は少し面白いことを言っている。
朝日は、「法による秩序が力で壊される弱肉強食の世界に戻してはならない。国際社会は危機感を共有する必要がある。ただ、各国の対応は割れている。英国は「紛争拡大は望まない」と表明、フランスは交渉による解決を求めた。欧州連合(EU)は国際人道法の順守を訴えた。一方で、カナダのカーニー首相が米国支持を打ち出したのは、きわめて残念だ。ルールに基づく国際秩序の衰えを指摘し、大国の横暴に対抗する中堅国の結束を訴えたのではなかったか?」としている。
上毛は、「イラン攻撃について、英国やフランス、ドイツなど欧州諸国も、関係国に自制を促したものの、米国などへの明確な批判を避けた。トランプ氏を刺激したくないとの本音や、第2次大戦下のユダヤ人大量虐殺を背景にしたイスラエルへの配慮がうかがえる」と欧州を批判する。
新報は、「英、仏、独の3か国は共同声明を出し、イランによる中東各地へのミサイル攻撃を非難し、米国などと協力することで合意したと表明した」。しかし、「国際法違反が指摘されるロシアのウクライナ侵攻に対する姿勢」とは違っていて、これは「ダブルスタンダード」ではないかと迫る。
それぞれに的確な指摘であるが、興味深いことに、「国際社会」(ここでは英仏独のこと)の対応についての見方が、三社で違っているようである。
(2)国連に期待する声は、極めて少ない。昨年6月との違いのひとつである。まともに論じているのは、毎日のみである。イランへの攻撃を受けて開かれた国連安全保障理事会では、米国やイスラエルを非難する意見が相次いだという。一方、グテレス事務総長は米国、イスラエルの攻撃とイランの報復を非難した後、「はっきりさせておきます。永続的な平和は、真の対話と交渉を通した平和的手段でのみ達成できます」と述べたと言う。
8.日本政府の姿勢について
日本政府に邦人保護の措置を求める点においてはすべての社説で異論はない。それ以外の点で日本政府に姿勢に対して、産経を除いて、読売を含めてすべての社説が昨年6月と同じような批判している。
(1)アメリカ・イスラエルの攻撃への評価を回避していると批判するのは、読売(2度)、日経、東京、北海道、新報、神戸、上毛である。日本はアメリカの同盟国であるから批判せよというわけである。タイムズは「暴挙に毅然とした姿勢を」と言い、神奈川は「無批判な対米追従」を改めよと言う。京都は「米国を批判もいさめもしないのは理解に苦しむ」、「米国に追従」するなと注文した。
(2)両国の暴走を止めよというのは、6社である。読売は「憂慮を伝えよ」、北海道は両国を「止めよ」、新報は両国を「説得せよ」、神奈川は「いさめよ」、毎日は「自制を働きかけ」よ、日経は「懸念を明確に伝え、緊張緩和を求めよ」という。
(3)停戦・平和解決・外交努力を求めるのは多い。読売、朝日、日経、北海道、神戸、東京、新報である。例えば、北海道は「責任ある平和外交を」、神戸は「外交交渉を」、上毛は「積極的な対話外交で」、東京「即時停戦を求めるべき」、読売は「事態の鎮静化を米国に働きかけよ」、新報は「国連憲章、国際法を遵守し、国際ルールの下に戻るよう説得すべきだ」と言う。
(4)イランに矛先を向けることによって、事実上アメリカなどを認めているではないかと言うのは、北海道である。すなわち、北海道は「イランに矛先を向けて、攻撃に一定の理解を示した」と批判している。
(5)日本政府の二重基準を指摘するものもある。神奈川は「法を顧みぬ振る舞いをただ座視して」いるだけでは、「ウクライナ侵攻を続けるロシアを批判できなくなる」とし、新報は、これまでロシアを「力による現状変更」だと批判してきたのに、おかしいと疑問を呈している。
まとめ
今回の攻撃にはイスラエルのネタニヤフ首相のイニシアティヴの重要性が指摘されているが、イスラエルの責任を独自に問う声は意外にもほとんどない。戦争の遠因として、イスラエルの中東全域への「野心」も含め、イスラエルの責任についてはアメリカとは別にもう少し言及があってもよかった。昨年6月には、トランプのアメリカのイラン攻撃は、「イスラエルと一体化した軍事行動を急いだ場当たり的な対応との印象が拭えない」とし、米国はイスラエルに強い影響力を持つのに自制させず、イラン攻撃に加担したと批判した北海道新聞を始めいくつもの新聞がイスラエル批判を展開していたが、今回は静かであった。
この戦争の影響として、ウクライナでの戦争やガザとヨルダン川西岸でのパレスチナ人のジェノサイドがどのようになるのかといった視線もほしかった。興味深いことに、朝日だけがトランプの提唱するガザの平和評議会に悪影響を与えると述べている。「中東、イスラム諸国がイスラエルの独善に反発することは必至だ。評議会は機能不全に陥りかねない」というのである。平和評議会にこれほどの重要性をもたせているのは、朝日だけである。
また、この戦争が北東アジアに対して持つ意味を産経は次のように危惧している。イランとの戦争が長引けば、「米国の関与が手薄になり、中国や北朝鮮、ロシアが北東アジアで挑発的な行動に出る恐れもある」というのである。
昨年6月には、朝日新聞が、「イラク戦争時から未解決な国際問題は実は、中東の混迷だけでなく、米国の暴走に対処するすべを世界が見いだせていない現実だ」と述べていたが、今回も見事にこの現実が露呈したのである。
総じて、産経は日本の高市政権と同じ論調を取っていることが際立っている。すべてをイランのせいにして、イランの自制を求めている。昨年6月にはやや立場があいまいで会った読売は、今回は、きっちりとアメリカ・イスラエルを批判しているのが注目される。
最後に一言。日本全体での意見分布という点では、おそらく新聞の情報を参考にする人は1割にも満たないであろう。圧倒的に多くの社説がアメリカ・イスラエルの攻撃を糾弾し、日本政府の姿勢を批判していても、SNSなどの情報による世論はそうではないだろう。このギャップをどう考えるべきだろうか。