「世界史の眼」特集:「イスラエルのガザ攻撃」を考える 2(2023年11月21日)

イスラエルは「自衛権」を行使しているのか  

 イスラエルのガザ地区への攻撃は、ハマースの「テロ」攻撃に対する「自衛権」の行使であるとイスラエルは主張し、欧米の各国(アメリカ合衆国、イギリス、そしてEU)もそのように主張して、イスラエルの攻撃を容認している。

 それにしても、病院などを破壊して子供を大勢犠牲にし、燃料を押さえ、水や電気を遮断するイスラエルの攻撃が、「自衛権」を超えたものではないかという批判が渦巻いている。

 加えて、愚考するならば、国連憲章51条は、「安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間」、「自衛権」を認めるとなっている。だが、安保理はそういう措置を一向に取りそうも、取れそうもない。となるとこの「自衛権」は無限に続きそうである。

 ところが、そもそもイスラエルに「自衛権」があるのかという、根本的な疑問が提起されているのである。日本の政府はもちろん、大手マスコミもこれには一切触れていない。アルジャジーラから聞いてみよう。

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 イスラエルや欧米諸国が「自衛権」の論拠としているのは、国連憲章第51条である。

 しかし、国連関係者は、今回のイスラエルのガザ攻撃は、この51条の自衛権規定には当てはまらないと主張しているのである。国連憲章第51条を見てみよう。そこにはこう書いてある。

 「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を(行使することを=南塚)害するものではない。」

 一見すると、イスラエルはまさにこの「固有の権利」を行使しているように見える。しかし、多くの専門家がこれに疑問を呈している。例えば、パレスチナ占領地での人権に関する国連の特別報道官フランチェスカ・アルバーネスは、イスラエルは、自衛権を主張することはできないと断言しているのである。

 彼女によれば、「自衛権は国家が他の国家によって脅威を与えられた場合に発生するのである。」だが、10月7日にイスラエルが受けた攻撃は、イスラエルが効果的に統制してきた領域であるガザにいた武装集団によるものであった。イスラエルは、2005年にガザから撤退したが、ハマースが権力を握った2007年からは、地上、海上、空中の封鎖をしてきた。これは「占領」と言っていい状態である。こういう状態の下では、「イスラエルは、他の国家から脅威を受けたと主張することはできない。イスラエルは占領していた領域内の武装集団から攻撃を受けたのである。イスラエルは、自ら占領している領域から、つまり軍事的な占領をしている領域からうけた脅威に対しては、自衛権を主張することはできないのだ。」

 この「占領している領域」の問題は、ヨルダン川西岸の「壁」の問題にも関係している。 「イスラエルは、自ら占領している領域から、つまり軍事的な占領をしている領域からうけた脅威に対しては、自衛権を主張することはできないのだ」という時、フランチェスカ・アルバーネスは、ヨルダン川西岸の「壁」の事をも指している。イスラエルは、この「壁」は自衛権」に基づいていると主張している。だが2004年に、国際司法裁判所(ICJ)は、西岸で「壁」を作るという事は、「自衛権」の行使には当たらないと「勧告」していた。それは「占領した領域においては自衛権は発しない」からであるというのであった。

 たしかに陸海空の封鎖を受けている領域や、軍事的に占領されている領域を正規の「国家」と言えるかどうかは、重要な問題である。現地の人々の目線に立てば、かれらが正常な国家を持てないでいることは間違いがない。われわれはもっと現地の人々の眼で考える必要があると痛感させられる。こういう見方をもっと広く共有していかねばならないであろう。

 関心のある方は、Aljajeeraを見てください。

Does Israel have the right to self-defence in Gaza? | Israel-Palestine conflict News | Al Jazeera

 現地の人々の眼から考える参考として、ハマース政治局情報センターの緊急メッセージを次に掲げます。またガザの「アハリー・アラブ病院を支援する会ニュース・レター」を、「世界史寸評」に載せますので是非ご覧ください。

(南塚信吾)

藤田進
ハマース政治局情報センターの緊急メッセージ

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