世界史寸評
世界史の産物としての「核兵器禁止条約」

 核兵器の開発、実験、生産、保有、使用を禁ずる国際条約が2021年1月22日に発効した。この「核兵器禁止条約」は、2017年7月に122か国の賛成によって国連で採択され、今回、51か国の批准を得て、発効したものである。この条約は、1996年以来の人々の国際的な活動の産物であり、一つの「世界史としての歴史」を持つものと考えられる。

 イニシアティヴを取ったのは、科学者、法律家、医師のNGO組織であり、国連での審議・採択を推し進めたのは途上国を中心とする人々と日本の被爆者組織であった。こうした動きは歴史的には新しい動きである。考えれば、核兵器は、日本を含む世界史の産物なのであり、その兵器を禁止する動きも世界史の産物なのであるが、見方を替えると、それは世界史の中の強国の権力の産物であり、それを禁止する動きは世界史の中で権力から遠い人々の成果である。そして、核兵器を使った国も、使われた被爆国も批准しないという重大な現実を、世界史の問題としてどのように考えるか、世界史研究に課された新たなテーマである。

 ともあれ、一度は「核兵器禁止条約」のテキストを読んでみよう。日本語では、外務省による「暫定訳」しかないのだが。

(S.M.)

条約全文

英文テクスト:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000433137.pdf

条約の邦訳にはいくつものヴァージョンがある。例えば、

外務省暫定訳:https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000433139.pdf

ヒロシマ平和メディアセンター訳 :http://www.hiroshimapeacemedia.jp/?p=73528

※世界史に関わる情報を随時「世界史寸評」として掲載します。

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