パレスチナのガザ地区において、ウクライナ戦争以上に世界を巻き込んだ戦争が起きている。イスラエルは別としても、アメリカを始めヨーロッパ諸国や日本の政府・マスコミは、ほとんどが、2023年10月7日にハマースがイスラエルに大規模な攻撃をしたことから、すべてが始まったように論じている。ハマースの攻撃は「テロ」攻撃であり、イスラエルは「正当な自衛権」を行使しているのだと。
しかし、今回の攻撃は、世界史の一環として続いている19世紀以来のユダヤ問題、その現代的段階としてのイスラエル国家(1948年建国)の問題、さらにはイスラエルとパレスチナの相互攻撃という問題の一環なのである。2023年10月7日に突然始まったわけではない。ごく近いところでも、2021年5月にイスラエル軍はイスラム教において3番目に神聖な場所であるエルサレムのアル・アクサーモスクをラマダン中に襲撃していて、これ以後、ハマースは大きな反撃を準備してきたと言われる。また今年2023年の7月にはイスラエル軍がヨルダン川西岸のジェニンにある難民キャンプに大規模な攻撃を行い、今回はこれへの反発ではないかともいわれている。
ところが、今回のイスラエルとハマースのガザ戦争については、これまで日本の大手マスコミにはアカデミックな中東専門家はほとんど出てこない。多士済々の専門家がいるにもかかわらずである。中東専門家が出ることを渋っているのか、出してもらえないのか分からないが。ようやく最近になって、そのような専門家の発言がすこしずつ聞けるようになってきた。中東の専門家の発言が聞けるサイトなどをいくつか挙げておきたい。
まず、高橋和夫さんの発信に注意しておきたい。高橋さんには、いろいろな場で苦心しながらの発言が多いが、例えば、「日本人はまずパレスチナで何が起きてきたかを知らなければならない」videonews.com(2023・10・21)が分かりやすい。
つぎに、岡真理さんの発信がある。最近大阪教育大学の渡邊昭子さんから研究所に紹介されたものだが、
1.「緊急学習会 ガザとは何か」(2023・10・20)(youtube ①、②、③、④)
京都大学の「緊急学習会 ガザとはなにか実行委員会」主催
2.「ガザを知る緊急セミナー ガザ 人間の恥としての」(2023・10・23)(youtube)
早稲田大学の学生有志が催したセミナー
でのパレスチナに内在した発言が役に立つ。
ごく最近の発言では、『東京新聞』(2023年11月2日)や『朝日新聞』(2023年11月7日)での酒井啓子さんの発言がある。前者は早稲田大学の木村英明さんから指摘された情報である。後者は、酒井さん自身の原稿なのかどうか不明であるが、文脈に断絶があるように見えるのが気になる。なお、『東京新聞』(11月7日)の「こちら特報部」の「ハマスとは」は秀作である。加えて、雑誌『世界』(岩波書店)の11月号に出た臼杵陽さんの論文がある。
わたしたちは、これらの情報を吸収して、一方的な判断をしないように心掛けたいものである。
なお、アルジャジーラの下記のサイトは必見である。
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世界史研究所では、「イスラエルのガザ攻撃」を考えるために、「世界史の眼」の特集号を組んでみた。以下では、ハマース側からあるいはパレスチナの住民の眼から見ると事態はどのように見えているのかを論じた藤田進氏の論稿と、今日のパレスチナ問題を引き起こしたイギリスの第一次世界大戦時の外交がはらむ問題を論じた木畑洋一氏の論稿を掲載する。
(南塚信吾)
Al Jazeera の Simple guide を和訳してみました:
/Users/miwanotakashi/Desktop/Palesitine/A.J. Hist.Back/パレスチナ紛争の根源(アルジャジiーラ)Ver.2.pdf